レイ・カーネ
プナヘレ
レイ・カーネはカウアイ島のエレエレで１９２５年
に生まれ、オアフ島のナナクリで漁師の息子として育った。
幼い９歳のときに、ニイハウ島から来た二人のスラックキー演奏者アルバート・カヴェーロと
ヘンリー・カプアナからギターを学び始めた。
「マクア牧場からきたアルバート・カヴェーロは、週末になるとギターを持ってきたんだ」とレイは思い出す。「ある日、朝早く起きたら、この美しい音楽が聞こえてきた。てっきり三人で演奏しているのかと思ったら、彼一人だった。教えてちょうだいって頼んでも、やっこさん、くだらん出てけって言うんだよ。この古い人間を説得して、教えてもらうのは大変だった。二人は魚が好きで、私は魚を潜ってとるのが上手だった。そこで、私は魚を捕まえ、彼らはスラックキーを教えるということで手を打ったわけだね。」
１９４０年代をレイは軍隊で過ごした。本土と
ドイツに配属されたレイはあまり演奏できなかった。しかし、１９４７年に
ギャビー・パヒヌイの最初の７８回転レコードで古典のヒイラヴェを聞き、
再び意欲をかきたてられた。レイの最初の録音は１９６１年だった。１９７６年
には最初の完全なアルバムを録音した。１９７３年、レイは十分な時間を使ってソロリサイタルを
した最初のスラックキーギタリストになった。この頃、レイは溶接工として生計をたて、
妻イローディアと子供たちとナナクリに住んだ。
１９８７年、レイとイローディアはワシントンＤＣ
に旅行した。そこで、レイは全米芸術基金の民族遺産賞を贈られた。
それ以来、彼は何度もツアーとパフォーマンスをこなし、ダンシングキャットレコードの
ために３つのアルバムを録音した。
スラックキーギター全体からすると、レイはより古い演奏法を代表している。レイは技法を伝えるため、スラックキーの教則本とビデオを出し、定期的に教えている。オアフ島で毎年８月の第３日曜日に開催されるギャビー・パヒヌイ/アッタ・アイザックス スラックキーフェスティバルと、ハワイ島のヒロで毎年七月の最後から二番目の日曜日に開催されるビッグアイランド スラックキーギターフェスティバルで、レイは何度も主演している。
収録曲
第一部
- ワイアナエ スラックキー フラ
("Wai'anae Slack Key Hula" レイ・カーネ - インストゥルメンタル)
ワイアナエはオアフ島の一地方でレイが住んでいるナナクリの町がある。
レイはこの曲をＧメジャーのチューニングで演奏している。
このチューニングはよくタロパッチ・チューニングと呼ばれているもので、D-G-D-G-B-D の音を使う（最も低い音の弦から最も高い音の弦の順番)。
この曲は伝統的なスラックキーギターの曲、Ki Ho'alu（「キー・ホーアル」スラックキーの意味）の一部を使っている。
- パウオア リコ カ レフア ("Pauoa Liko Ka Lehua" エマ・ブッシュ - ボーカル)
タイトルは、ホノルル近郊のヌウアヌ バレーの入り口にあるパウオアの地域をさしているが、
そこは「リコ カ レフア」（レフアのつぼみ）で有名だ。初期のラジオとナイトクラブ
のエンターテイナーだったエマ・ブッシュの書いたこの非常にパーソナルな歌には、
右に左に揺れ動く波型のペチコートと羽ばたくようなスカートがでてくる。
この歌は伝統的なハワイアンミュージシャンに広く普及している。レイはこの歌を
「イイ（'i'i）」ボーカルとして知られるハワイアンスタイルで歌っている。
それは、気取った、または意味ありげなボーカルという意味だ。
レイはこの歌を友人のギャビー・パヒヌイから学んだ。彼は二番目のインストゥルメンタル演奏
でギターから倍音の美しいチャイムを鳴らしてこのバージョンをユニークにしている。
- プア サディニア ("Pua Sadinia" デイヴィッド・ナパ - インストゥルメンタル)
「サディニア」はクチナシのハワイ語の名前で、「プア」は花。「あなたのことを忘れない」としても知られているこの歌は、１９３０年代後半にさかのぼり、サモアの曲がベースになっている。スラックキーは強い郷愁の気持ちを呼び覚ます音楽スタイルだが、プア サディニアはとくに涙を誘う。
- ５曲メドレー (インストゥルメンタル) ケアロハ/パパコレア/エ フリフリ ホイ マイ/マウナ ロア/プア マカハラ
これは、インストゥルメンタルのスラックキーの曲としてよく演奏される５曲の美しい古典的ハワイアンのメドレーだ。これらの５曲の録音はメドレーとして非常によくできていて、まるで長くて複雑な美しい一つの曲のようだ。レイは、過去二世代にわたり最も愛され影響力をもつハワイアンシンガー、ジェノア・ケアヴェに敬意を表してケアロハとパパコレアを演奏している。
ケアロハ
("Kealoha " レイ・コリンズ & マッディ・ラム) - １９２０年から１９６０年は、
ラジオ（とくに"Hawai'i Calls"の番組）、映画、テレビ、国際的レコードレーベル
がハワイアンソングとダンスを世界中に広めた時代だった。その「ハワイアン音楽の黄金時代」からのポピュラーなラブソングだ。
パパコレア ("Papakolea" ジョン・Ｋ・アルメイダ
) - ハワイアン音楽の長老、盲目のマンドリン奏者、シンガー・ソングライターの
ジョン・Ｋ・アルメイダの作曲。タイトルは、ホノルルのプオワイナ（現在パンチボウルと呼ばれている
ところ）のスロープにあったハワイアンの農場コミュニティを称えている。
詩人の歌詞はそこに植えられていたミキノリア（マグノリア）をほめて、近所の
マキキとマノアについて語っている。ほとんどの古参スラックキー演奏者は、歌っているときも歌っていないときも、演奏中なら心の中に歌詞があるというのが好きだ。
エ フリフリ ホイ マイ
("E Hulihuli Ho'i Mai " マッディ ラム) -
ハワイのソングバード、レナ・マシャド (1903 - 1974) によって良く知られる
ようになった憧れとロマンスの歌。タイトルは「振り向いて帰って来て」という
意味。
マウナ ロア
("Mauna Loa" トラディッショナル) -
ワイメアのひばり、ビッグアイランドのシンガーソングライター、ヘレン・リンゼイ・パーカー
（スラックキーギタリストのサニー・チリングスワースの伯母）
による「いけない」フラ。美しいハワイアンのスタンダード曲、アカカの滝も彼女が書いた曲だ。タイトルはビッグアイランドのあの巨大な山をさしていると思うかもしれないが、そうではなく、カアアロア（今日ではキャプテン・クックとして知られている町）に行くため海を往復している舟をさしているのだが、カオナ（隠れた意味、別の意味）は女の露な描写だ。
マウナ ロアは一般にギャビー・パヒヌイを最も連想させる。レイは、１９５０年代にパパ・デヴィッド・カルアからこの歌を学んだ。彼はリーフホテルで歌っていたが、そこでは火曜と日曜の夜に
、レイや他の多くのハワイアンミュージシャン（ギャビー、ジェシー・カリマ、クライド・キンディ・スプロート、
地元のスポーツアナウンサーのラリー・プライスなど）が、ハウの木の下で即興のジャムセッションをやるためによく集まっていた。
プア マカハラ
（"Pua Makahala" カティー・スティーヴンス・イイ、ジェームス・イイ・ロドリゲス、ヴィッキー・イイ・ロドリゲス）
- マカハラは、白、黄色、またはオレンジ色の良い香りの花をつける低木。この曲も１９３０年代の
レナ・マシャドのヒット曲で、レイは昔からこの曲を演奏している。これは再びポピュラーになり、
フラのコンテストでよく演奏されている。
この美しいメドレーのしめくくりに再びケアロハがすこし演奏される。
- マイ アエ イ カ ヘワ
（"Mai 'Ae I Ka Hewa" ホレーショ・Ｒ・パーマー - インストゥルメンタル）
レイと妻のイローディアが彼らの教会、ワイアナエ・セブンスデー・アドベンチスト教会の聖歌隊の指揮者、アンクル・バディー・ケリーから学んだクリスチャンの古い賛美歌、誘惑に負けるな（Yield Not to Temptation）の演奏。歌の意味は明瞭で、永遠の生命ということだ。歌詞のハワイ語の翻訳と楽譜は、１９７０年代に出版
されてハワイアンの信徒の伝統的な集会に広まったソングブック、"NA HIMENI HAIPULE HAWAI'I" にある。
- プナヘレ ("Punahele" レイ・カーネ - インストゥルメンタル)
プナヘレは、お気に入りまたはペットの意味だ。レイの最も有名な曲で他の演奏者が最もよく録音し
ている。１９３８年のある晩、ナナクリのザブランビーチにいるときに、プナヘレはレイのもとへ
やってきた。「あの頃、車なんてないから夜は真っ暗。だから暗闇の中をザブランの浜に座っていた。ひんやりしたいい風がきて、波が砂の上で跳ね上がる音がする。月の光が水面をゆらゆら動いていた。私に何かひらめきをくれたものがあった。それはとても素敵な、とっても豊かな何かだった。それが私にひらめきをくれたんだよ。」この曲の特徴は、美しく複雑な"ハンマーオン"と
"プルオフ"の変化だ。それはレイの演奏にしばしば出てくるが、この曲で十分に展開されている。
"ハンマーオン"は、二番目の音を出すために、ある音を弾いたらすぐその音の上をフレットすることによって
作り出す装飾音だ。"プルオフ"は、弦を弾いたらすぐその音から指を離し、二番目の音を出すことを言う。
二番目の音はオープンか別の指でフレットしておく。この曲はＧワヒネチューニングだ（D-G-D-F#-B-D）。
第二部
- ナネア コウマカ イ カ レアレア
（"Nanea Kou Maka I Ka Le'ale'a" トラッディショナル - 編曲 レイ・カーネ - インストルメンタル）
このタイトルのいくつかある翻訳の一つは「うれしくてあなたの顔はゆるんでる」だ。
この官能的喜びの賛歌は、大部分のハワイアンソングとちがって、あまりカオナ（隠れた意味）に頼らない。レイは、メロディーとそれをスラックキーで演奏して感じとる方法に魅惑されていた。
- モーニングデュー("Morning Dew" エディー・カマエ - インストルメンタル)
この歌のテーマは「朝露のように新鮮で美しいままの愛」だ。この非常にポピュラーな、美しい１９７０年代中期の曲は偉大なウクレレ演奏者エディー・カマエによって書かれた。
- フラ オ マキイ（"Hula O Makee" トラッディショナル、ジョン・カラパナの作品とされることがある - ボーカル）
この歌はカウアイ島東海岸のカパのリーフを離れていくマキイという船の話。
もう一つの船、マルラニは彼女を探すためにやってくる。カオナ（隠れた意味）は、女の恋人
が去りそして帰ってきたのだと言われている。
- ナニ ホオマナオ ("Nani Ho'omana'o" レイ・カーネ - インストルメンタル)
タイトルは「美しい思い出」または「甘美な思い出」を意味している。
この曲は、より古い伝統的な演奏方法を代表している。レイはこの曲をＤワヒネチューニング
（D-A-D-F#-A-C#）で演奏している。Ｄワヒネチューニングは初期の時代により多く使われていた。
- ハワイイ アロハ
（"Hawai'i Aloha" ロレンソ・リヨンズ牧師 & ジェームス・マクグラハム - ボーカル）
これはたぶん今日のハワイで最も良く知られた賛美歌だ。
１９７０年代のハワイアンルネッサンスの高まりのときにロイヤル・ガーナー
によって再び紹介され、コンサートや卒業式、その他イベントの終わりに最もよく
歌われている。立ち上がって手をつなぎ、いっしょに揺れながら歌うことは伝統となった。
タイトルは「いとしいハワイ」を意味している。このバージョンで、レイは
妻、イローディアのリードボーカルに加わり、サンフランシスコ・ナヘナヘシンガーズ
といっしょに演奏している。
- ウア ノホ アウ ア クパ
（"Ua Noho Au A Kupa" エドワード・ナイノア、エマ・ブッシュ - ボーカル）
この曲のタイトルは「あなたの顔に慣れてきた」という意味で、
レイの優しい声と美しいギターの伴奏、そしてインストルメンタルのバースが心に残る。これはレイが、ギャビー・パヒヌイと、そしてとくに、長い間ギャビーの演奏の相棒だった偉大なスラックキーギタリスト、レランド・"アッタ"・アイザックスから学んだもう一つの歌だ。
レイ・カレオアロハポイナオレオヘレマヌー・カーネのチューニング
（レイのミドルネームは「小鳥のように飛び去って、どこから来たか忘れても、愛の声はきっと忘れない」という意味）
このアルバムでレイが使ったチューニング:
- G タロパッチ (メジャー) - (最も低い音の弦から高い音の弦へ D-G-D-G-B-D ) - 以下に示す曲以外は、この録音のすべての曲で使われている。
- G ワヒネ (メジャー7th) - (D-G-D-F#-B-D)
- プナヘレで使っている。レイはダンシングキャットから出る二番目の録音、ヴァアヒラ所収のヴァアヒラでもこのチューニングを使っている。
- D ワヒネ (メジャー7th) - (D-A-D-F#-A-C#) - ナニ ホオマナオ.
レイが使う他のチューニング:
- C ワヒネ (C-G-D-G-B-E),
ヒイラヴェとリフエ/ハロナ/ワイアラエ メドレーで使っている。
どちらの曲もダンシングキャットから出る二番目の録音、ヴァアヒラに入っている。
- A マウナロア (E-A-E-E-F#-C#) - ダンシングキャットからこれから出る予定のキラ キラ オ ハレアカラとポエナ オレ スラックキー。
- レイは時々標準チューニングも使っている (E-A-D-G-B-E) ボーカルをバックアップして気ままにコードを弾くときが多い。
イローディア・カーネ、マイケル・ノヘア・カーネ、フェイス・カレオアロハ・カーネ、
ミラン・ベルトサ、ベン・チャーチル、フロスティ・ホートン、トニー・ヒューガー、
ジェイ・ジャンカー、エディー・カマエ、ミルナ・カマエ、ジョージ・クオ、レイモミ・クオ、
ミルトン・ラウ、ノエラニ・マホエ、リン・マーチン（ハワイ州文化芸術基金）、
リカルド・トリミーリョス博士、ダーク・ボーゲル、レイトマーガレット ウィリアムス、
KCCN 1420 AM ハワイアンラジオ、レイのファンになってくれた人々、レイをずっと助けてくれた人々、に特別の感謝をささげます。
制作 ジョージ・ウィンストン。
モーニングデュー、ナネア コウ マカ イ カ レアレア、ハワイイ アロハはスタジオ録音で、技術は
ハワード・ジョンストン。他の曲はレイ・カーネのハワイのナナクリの自宅で録音され、
技術はベン・チャーチルが担当した。
ミックスはハワード・ジョンソン。
デザインとカバーグラフィックはネルソン・マクア・デザイン。
レイ・カーネのカバー写真はカイル・ローゼンボルグ、彩色は
マリアンヌ・クランシー。
ノート編集はパトリシア・シップステッド、スー・ガッチ。
ブックレットのインテリアデザインはスー・ガッチ、
リサーチアシスタンスはヘザー・ジンママン。
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アローハ レイ・カーネ
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