レイ・カーネ
ヴァアヒラ
レイ・カーネは1925年10月2日にカウアイ島のコロアで生まれ、オアフ島のワイアナエ海岸のナナクリで育った。
ナナクリでは継父のウィリアム・パノーケがカヌー漁の網元をしていた。レイの母、エマ・カミングスは音楽一家に生まれた。その家族の中には、彼女の兄弟でバンドリーダーのアンディ・カミングス、歌手のジェノア・ケアヴェ、その他数多くの有名なハワイアンミュージシャンがいた。レイの父、ハーマン・カーネは卓越したスラックキー演奏者だったという。しかし、レイがまだ幼いときに家族を残して出て行ったまま連絡を絶ってしまった。
ナナクリでレイは子供時代の大半を水の中で過ごした。九歳のとき、彼はすでに素潜りの達人だった。この頃、レイは自分のミドルネームが示唆する音楽への愛にも目覚め始めた。レイのミドルネームは、カレオアロハポイナオレオヘレマヌー（小鳥のようにやってきて飛んでいくけどきっと忘れない愛の声）と言うのだ。「あれは忘れもしない。」とレイは言う。「ある朝早くに目が覚めると、ビーチのテントから最高に美しいギターの音が聞こえて来たんだ。三人で弾いているような音がしたけど、中を覗くと弾いているのはたった一人。マクア牧場からきたアルバート・カヴェーロだった。アルバートは私が見ているのを見てギターを片づけてしまった。当時は、分かるかな、スラッキーは自分だけで演奏するか、家族か限られた仲間だけで演奏するものだったんだ。私の家では誰も演奏しない。だからお手上げさ。すぐそこを離れたけど、頭からあの音が離れなかった。」
レイは彼らしい判断でアルバートにスラックキーを教えてくれるように頼んだ。レイは言う。「出てけって言うんだな。おまえは家族じゃないんだから出てけってね。けど、私はくっついて歩いたんだ。毎日オーペルを食べるのにうんざりしてるのが分かったから、クームーなんかどうだろう、ウルアもいいなあ、アーヴェオヴェオはいかがでしょって聞いたんだ。それをとってきてくれるのかって言うから、もちろんって言ったよ。もし欲しかったら鯨だってとってきてあげるんだけどなってね｡それで私達はギターのレッスンと魚を交換することにしたのさ。」レイはまた、ヘンリー・カプアナや小さい頃に歌を教えてくれたラジオにも助けられたと言う。｢お気に入りのスポットはザブランビーチだ。夜はとても静かだった。まわりに誰もいない。波に月の光が落ちているのを見つめながら、座ってギターをひいたものさ。｣
レイのスタイルの大部分は彼の人生のこの時代にもたらされた。「アルバートが演奏を絶対変えないようにと言ってね、」とレイは言う。「それから少し付け加えたけど、いつも六十年以上前に彼が教えてくれた通りに演奏しようと努めてきたんだ。」古い時代の演奏に根をおろしたレイは、通常、二拍目か四拍目を強く響かせて（三弦ないし四弦で）、一拍目と三拍目に（ギターの五弦ないし六弦で）調速のベースを弾くために親指を使う。このパターンは古代のイプ、詠唱と踊りのときに使ったヘチマの実のリズムに影響を受けている。
1940年代になると、レイは軍隊に入り、ヨーロッパとアメリカ本土を旅した。｢ギターがなかった。｣と彼は言う。｢だから、ほとんど弾けなかった。けれども、たくさんギターについて考えて、夢の中でまでそうだった。｣彼が帰郷したとき、伝説的スラックキー奏者、ギャビー・パヒヌイの最初のレコードを聞いた。｢それがもう一度演奏しようという気持ちを奮い立たせた｣と彼は言う。レイは1961年に最初のレコーディングをする。そして彼の最初の完全なアルバムを1976年にレコーディングした。
レイは、音楽の流れを滑らかにする良いスライドとフィンガーピッキングの重要性をいつも強調していると言う。レイは姿勢も重視する。「スラックキーは非常に個性的なんだ。」とレイは言う。「だから、心をこめて自分のやり方でやりなさい。自分に謙虚になりなさい。できる最高の演奏をして、分かったことは与え合いなさい。もし私達がスラックキーを共有しなかったら、私達はスラックキーをなくしてしまう。昔、本当にそうなるところだったんだ。だから、気をつけて守っていかないといけない。」
1987年に、レイは演奏と指導が認められ、伝統的アーチストの国の最高の栄誉、全米芸術基金の民族遺産賞を贈られた。
ハワイ州政府とホノルル市もまた彼を称えた。その同じ年、レイはロバート・マッジのハワイアン レインボウ ドキュメンタリーに登場し、各島を凱旋した。彼はレコーディングスタジオにも戻ってきた。
ダンシングキャットの進行中のソロセッションシリーズは、今日までに、1994年リリースのプナヘレ、このリリース、そして三番目のアルバムに十分なものを制作してきた。「スラックキーをソロで演奏するの
は素晴らしい。」と彼は言う。「個人のフィーリングが本当に出てくる。好きだねえ。」
1989年、レイはスミソニアン協会のアメリカンフォークフェスティバルやその他いくつかの本土の有名な会場に招待された。1990年は長年の夢だったカーネギーホールでのスラックキーの演奏を実現した。1990年代になると、健康問題が彼の移動能力を制限し始めた。しかし、へこたれない強靭な精神力で、レイは教え、旅し、ファンになり友となった数え切れない友人達と音楽をシェアし続けている。彼はハワイで、日本で、アメリカ本土で演奏し、多くのビデオやラジオ放送に登場し、思い出すことのできることについてさらにインタビューを与え、世界中から来る訪問者を迎えている。
「世界中の人が電話してくるんだ。ヨーロッパ、日本、カナダ、オーストラリア、聞いたことのなかった場所からも。もしもし、ギター演奏者のレイ・カーネさんでしょうか。そうです､私です｡すると彼らはショック状態になるんだ。彼らは興奮して木の葉のように揺れ始めるんだ。しかし、真剣に、音楽を愛しているから電話をかけてくるんだね。私は才能を与えてくれた善良な神に感謝して、それをシェアできたこの長い年月に感謝するだけだよ。」
収録曲
第一部
- ケイキ スラックキー
("Keiki Slack Key" インストゥルメンタル)
ケイキはハワイ語で子供のこと。レイはこのインストゥルメンタル曲を1960年代初めにトレイドウィンズのためにレコーディングを始めた頃に書いた。「ナナクリ・ビーチパークで走り回って遊んでる子供達がとっても可愛らしくてね。ギターを持ってたから、子供たちの走り回るのにあわせて弾き始めたんだ。」子供たちの遊ぶ音は常にレイの音の風景の一部になった。彼は、群居性の、自ら認める騒々しい子供として育った。そして彼自身、デニス、シャーリーン、エマ、ジョアン、マイケル、モアーナ、フェイスの七人の子供を持った。さらに、彼と妻のイローディアは、五十人以上の子供達の里親となった。「私達は、全ての民族、色、宗教の子供達のための国連プログラムを十五年間していたんだ。」とレイは言う。「私が病気になって、それをやめることになったんだけれども、今でも私達の家は全ての種類の子供達の集会場だ。うるさいけど、楽しいよ。人がハッピーなのを見るのは大好きさ｡」
ケイキ スラックキー
は、Gメジャーの「タロパッチ」チューニング(最も低い音程の弦から最も高い音程の弦へ順番に、D-G-D-G-B-D)をFのキーに緩めて（スラックして）演奏されている。
- イ カ ポ メ ケ アオ
（"I Ka Po Me Ke Ao" ボーカル）
レナ・サリスとヴィッキー・シルバの作曲したこのポピュラーなスタンダード曲は、言葉ではやりとりできないので目で表現する何かについて語っている。レイはここでもGメジャー
チューニングをFに緩めて演奏している。通常演奏されるGからD7に行きGに帰ってくるのではなく、GからAに行くコード進行は緊張の要素を導入している。
それは歌い手の誘いかけに対してまだまだと答えているみたいだ。
二番目と三番目のインストゥルメンタルのソロで、レイはユニークな美しいチャイム効果をつくっている。レイは、多くのスラックキーアーチストと同様に、ギャビー・パヒヌイから歌を学んだ。「アルバート・カヴェーロの後は、私にとってギャビーだった」とレイは言う。「ギャビーには本物のハワイアンスタイルがあった。彼の声、タイミング、タッチ、それを心で感じとれるよ。言葉ではちょっと表現できないな。」
興味深いことに、ギャビーは、ハーマンという名の、カカアコの最高のプレイヤーからスラックキーを習ったと語っていた。ギャビーは、ハーマンのニックネームはマヌーでラストネームを知らないとも言っていた。レイの父親は卓越したスラックキーギタリストとして知られ、ハーマンという名前で、マヌーという名前でもあった。そしてカカアコに住んでいた。ハーマンはギャビーと出会っていた可能性がある。
- ヒロ エ ("Hilo E" ボーカル)
ヒロを歌うこのトラディッショナルなメレ パナ（土地の歌）では、レイはGメジャーチューニング
をEまで緩めている。
レイの編曲は、サンズ オブ ハワイイの録音に基づいている。レイはこのグループが大好きだ。ギャビー・パヒヌイもいたし、フロントマンをエディー・カマエ、ベーシストをジョー・マーシャルで色々な機会にライブを行っていた。「彼らは凄いよ、本物のミュージシャンなのさ。」とレイは言う。「ジャムセッションは本当に素晴らしかった。みんなそこに集まり、何日もライブをしたんだ。」
イローディアはヒロ エを録音できてうれしいと言う。彼女の母はヒロで生まれ、レイとイローディアは1968年にハワイ島に住んでいたからだ。「一年後にレイの叔母の世話をするためにナナクリに戻ったんです。」とイローディアは言う。「それからはずっとここね。」
- ナ ホア ヘエ ナル ("Na Hoa He'e Nalu"
インストゥルメンタル)
尊敬すべきハワイアンの作曲家、イルムガルト・ファーデン・アルリとメアリー・カヴェナ・プクイが、サーファーとその海への特別の愛情にささげるこのトリビュートをつくった。
レイはこの曲をGメジャーチューニングで演奏している。しかし、Gのキーはいくつかの小節でCになる。
Cのベース音はないので、Gに再び転調するように促し続けるサスペンドの緊張感をレイはうまく出している。
彼自身、抜群のウォーターマンだ。1940年にレイはそのヒロイズムで勲章をもらった。
14歳の彼と17歳のハイエル・チンは荒波のなかを泳ぎ、マイリ岬で墜落した飛行機の二人の乗員の命を救った。
「あそこは私達のお気に入りのダイビングスポットだったんだよ。」とレイは言う。
「リーフも波も潮の流れもわかっていたからね。飛行機が沈む前に泳ぎ着いて、二人を400ヤードばかり運んだんだ。大した事じゃなかったんだけれども、次の日、KGMBラジオが特集をして、お偉方一同から手紙がきたんだ。」
次の救助の記事は、太平洋の楽園1940年3月号の抜粋だ（1990年1月 ホノルル
マガジンに再録されたもの）。
編集者注:
半世紀前のこの月、二人のナナクリの青年がヒーローになった。1940年1月のある午後、海に墜落した二人の陸軍パイロットを救助したのだ。今はリタイアしたそのヒーロー、ハイエル・チンとレイモンド・カーネは、ナナクリにずっと住んでいる。カーネは30年間、ローカル204のためにボイラーマンをして1982年にリタイアした。チンは、1970年にリタイアするまで、パールハーバーとルアルアレイで重機を操縦していた。二人の友達は50年前のメダルを今でも持っている。
ここから記事:
ナナクリのハワイアンヒーローは、14歳、94パウンド（42kg強）のレイモンド・カーネと17歳のハイエル・チンだ。1940年1月29日オアフ島ナナクリでアメリカ陸軍のウィリアム・ハインドソンとジェームス・ブレナンの命を救ったことで、この輝かしい二人のアメリカ少年 - ボーイスカウト - は、精神的な、霊的な、身体的な勇気を証明した。
午後1時40分、マイリとナナクリの間の荒海に上記二名の操縦する陸軍の軍用機が墜落した。
飛行機のモーターが止まり、溶岩の海岸から400ヤードの所への不時着だった。あと200ヤードまで来ると強い潮の流れが彼らを沖へ押し戻した。もし海岸までたどり着いても、陸軍の二人の若いパイロットは岩礁に叩き付けられて死ぬのではないかと思われた。寄せる波は高く、引き波は強かった。少年たちはナナクリ学校でバレーボールをしていて、ダン・クアキーニ（市の道路監督）から飛行機の墜落を知らされ、他の少年数名とともにトラックに乗りこんだ。「もっと大きな少年に行って欲しかったんだが、気が付いたらもう、彼らが海に飛び込んで行ったんだ。」とクアキーニは言う。「二人とも泳ぎの達人で、まもなく浜にパイロットを連れて帰ってきたよ。」重傷のブレナンがまず戻ってきた。次に機長が荒れる波のなかを安全に案内されて来た。いつも繰り返し泳いでいるナナクリの、トリッキーな潮の流れと激しい波の知識が、この二人の命をこの二人のハワイのアメリカ少年が救うことを可能にした。
墜落は午後1時40分に起きたが、午後2時45分まで救助隊の準備は整わなかった。
陸軍第18飛行隊司令官ウォルター・フランク将軍は、勲章とともにワシントンからの公的な称賛により十分に報いられるだろう二人の若きヒーローを褒め称えた。
- ヒイラヴェ ("Hi'ilawe" ボーカル)
最もポピュラーな、広く演奏されているスラックキーのスタンダード曲、ヒイラヴェはギャビー・パヒヌイと強く結びついている。ヒイラヴェは、ワイピオ バレーでのロマンスの物語だ。それは、恋人たちと、その情事の噂を象徴する小鳥たちの囀りのシンボルとして、タイトルの滝を使っている。
「ギャビーが1940年代に録音するまで ヒイラヴェは聞いたことがなかった。」とレイは言う。「その録音に言葉じゃ言えないものを感じて、すぐに覚えて、それ以来ずっと演奏しているよ。」レイはこのバージョンをCワヒネチューニング(C-G-D-G-B-E)をBbに緩めて演奏している（ワヒネチューニングの基礎的説明は7曲目を参照）。
これは1946年にギャビーが使ったCワヒネチューニング(C-G-E-G-B-E)と一音だけ違っている。
しかし、スラックキーは、一音変えただけで全然違うギターの世界が開かれる。
歴史的な、ギャビーの1946年のヒイラヴェの録音と、彼のその他の最も初期の4曲の録音、そしてそれ以外の14曲の初期スラックキーのトラックのCDがジョージ・ウィンストンのプロデュースでHana Ola Recordsから再発売されている。VINTAGE HAWAIIAN TREASURES, VOLUME 7: THE HISTORY OF SLACK KEY GUITAR (HOCD 24000)
- アロハ カ マニニ
("Aloha Ka Manini" ボーカル)
ルーアウ（ハワイアンの宴会）の定番、魚とポイに対するこのロット・カウーヴェのラブソングは多くの人によって演奏され、ギャビーと彼の息子ブラ・パヒヌイを含む他の何人かのトラディッショナルのトップパフォーマーにより録音されている。レイのGメジャーチューニングのアレンジはEのキーに緩められ、彼の妻イローディアとのボーカルデュエットがフィーチャーされている。コンサートでレイを見たことがある者なら皆、イローディアは彼の秘密兵器だということを知っている。彼女は素晴らしい声と輝く個性で常に満場の喝采を浴びている。
イローディアは、自宅では兄妹と歌いながら、セント・スティーヴンス教会では聖歌隊で歌いながら、ヌーウアナウで育った。
「兄のビスマルクはカメハメハ スクールに通っていました。兄が自分の知っている歌を私と妹のジュリエットに教えてくれて、一緒に歌っていたんです。」イローディアはまた、レナ・マシャードとアルフレッド・アパカを愛している。「ラジオでやっているときは、いつも一緒に歌っていました。でも、私自身が録音することになるなんて、まるで想像しませんでしたけど。」
- ヴァアヒラ ("Wa'ahila" インストルメンタル)
全てのワヒネチューニングと同じように、Gワヒネ(D-G-D-F#-B-D)はメジャーセブンスの音を含んでいる。主音のメジャーコードを出すためには、第一フレットでその音を押さえる（ここでは3弦目）。その同じ弦を開放弦にすると三番目の弦は属七の和音を強く響かせ、ワヒネチューニングの特徴的な音をつくりだす。
ワヒネチューニングはハワイアンが1800年代初期にスペインとメキシコのカウボーイから聞いたサウンドの影響を受けている。このチューニングで使われているD7とGメジャーコードは、メキシコとスペインのトラディッショナルソングで普通なE7とAメジャーコードの標準的チューニングと同じ音程を持っている。
Gワヒネは、スラックキー演奏者には、アンティ・アリス・ナマケルアのチューニングとして最も良く知られている。愛すべき作曲家、音楽家、リリウオカラニ女王の家の常客、アンティ・アリスは、1890年代の彼女の子供時代に遡る、飾らない、心を揺さぶるスタイルでスラックキーを演奏した。
彼女は、1970年代に影響を及ぼし、数世代のハワイの作曲家と音楽家の良き指導者となっている。
レイはこのアンティ・アリスのチューニングの美しい独奏を、彼女へのトリビュートとして工夫したと言う。アリスや他のスラックキーギタリストがしばしばするように、より深い共鳴音をつくるようキーはFに緩められ、この演奏はより古いハワイのフィーリング、サウンド、テンポを喚起している。「メロディーは昔に浮かんだものなんだ」とレイは言う。「カヌーが海を行き来するのを見ていたときだよ。」レイがトレードウィンズのために初めて歌を録音したときに、ノエラニ・マホエがタイトルとしてヴァアヒラを提案した。
「私の歌によく名前を付けていたんだ。」とレイは言う。「レオナードのものもそうだった。彼女は偉大な女性だ。私はリーフホテルで、彼女たちの大きなジャムセッションで、出会ったんだ。」ヴァアヒラとは、ホノルルのマノアバレーとセントルイスハイツの間の尾根をさしている。
第二部
- ワイ オ ケ アニアニ
("Wai O Ke Aniani" ボーカル)
レイがギャビーから学んだもう一つのスタンダード曲、ワイ オ ケ アニアニは、オアフのモアナルア バレーのケアニアニ尾根を歌った古い歌を編曲したものだ。1970年代から、レイはたいていこの曲でコンサートを始める。「この曲で始めるのは、これがお気に入りの曲の一つだからさ。」とレイは言う。
「本当に単純でスムーズで、スラックキーがどんなにスムーズでイージーで愛に満たされているかわかるよ。」
レイはGメジャーの「タロパッチ」チューニングをF#に緩めて演奏している。
「スタンダードなピッチには合わせない。」とレイは言う。「自分の声で行くんだ。」
- ウルパラクア ("Ulupalakua" ボーカル)
ハレアカラ山の裾野、マウイ島の涼しい高原にあるウルパラクア牧場はパニオロ（ハワイアン カウボーイ）の故郷だ。歌のリフレーンは繰り返しそのことを思い出させる。
この歌は、ジョン・ピイラニ・ワトキンスにクレジットされることが最も多い。
レイは、ここではGメジャーチューニングをF#に緩めて演奏している。VI-7 (E7th)コードでは第5弦の主音のベース音を維持して、トップの四つのピッチを使い、部分的なE7コードだけで演奏している。これは、チューニングがフルコードを簡単に使わせてくれないときや、主音のコンスタントで単調なベース音の力を維持したいときに、スラックキーで良く使われる。
この歌ではしていないが、II (A)と IV (C)のコードでも良く使われる。
- キラキラ オ ハレアカラ
("Kilakila 'O Haleakala" インストゥルメンタル)
チャールズ・E・キングにクレジットされることの多い、このマウイのハレアカラ火山クレーターへのトリビュートは、歌手、フラダンサー、音楽家の昔からのお気に入りだ。レイは、Bbのキーに上げた珍しいマウナロアチューニングで演奏している。弦をきつくして音を上げるのはかなり珍しいが、それが歌に合っているか声の音域に合っているときや、この曲のようにスラックキーギタリストがインストゥルメンタルで心地良い共鳴音をつくるときには、そうすることがある。
他の全てのマウナロアチューニングと同様に、これは一弦と二弦（最も細い二つの弦）を五度の音程とは別に調弦する。それは普通Gメジャーチューニングで使われる一弦と重い三弦でするときよりも、演奏者が最初の二つの弦により六度の音程で非常に甘美な音を走らせることを可能にする。この特別のマウナロアチューニングのユニークな機能は、ユニゾンの音を中間域の三弦と四弦で強く響かせることができることだが、それは同じ音に調弦しているからだ。レイは、このチューニングで録音した唯一のスラックキーアーチストだ（1998年現在）。
- レイ ナニ ("Lei Nani" ボーカル)
チャールズ・ナマホエの長いポピュラーなメレ イポイポ（ラブソング）は、思いがけない、そして忘れられない出会いを歌っている。美しいレイ（lei）は親密さの象徴だ。レイ（Ray）はレイ ナニをGメジャーチューニングをFに緩めて演奏している。スラックキー ギタリストのレッドワード・カアパナもこの歌を演奏しているが、最も良く知られているのはギャビー・パヒヌイとハワイアンソングのファーストレディー、アンティ・ジェノア・ケアヴェの演奏だ。「ジェノアは親戚なんだよ。」と言うレイは誇らしげだ。
- ケ カリ ネイ アウ
("Ke Kali Nei Au" ボーカル)
バリトンとソプラノのデュエット、このチャールズ・E・ キングのクラシックは1920年代以来ハワイで最も良く知られたメロディーの一つだ。タイトルを訳すと「貴方を待ちながら」となるが、この歌は英語の「ハワイアン ウェディングソング」としてよく知られている。結婚式や記念日によく歌われるが、実は、 ケ カリ ネイ アウはレイとイローディアを結び付けたのだった。
「ある晩、ボーイフレンドが私をフラミンゴ チャックワゴンのディナーに連れて行ったんです。」とイローディア。「でも、席に座れるまでラウンジで長い間待たされてしまって、そこでモミ ジョーンズが演奏をしていました。ハワイアン ウェディングソングをリクエストされたモミはレイモンドに、そのときは私の知らない人ですが、こっちへあがって男性のパートを歌ってくれるように頼みました。そしてモミは風邪を引いていたので、お聴きの皆さんの中に誰か女性のパートを歌ってくれるボランティアはいませんかって尋ねたんです。それで私のボーイフレンドが、君が歌えるじゃないか、さあ、上がって、て言ったんです。それでそうしたんですが、とっても強力な歌ね。レイモンドは私の電話番号を聞いて、そしてまもなく私達は結婚したんですから。32年前だわ。」
（1928年に女性のパートを書いたのは偉大な作曲家、ヘレン・デシャ・ビーマー。スラックキー ギタリストのケオラ・ビーマーの曾祖母。
レイは、Bのキーで鳴るように半音緩めてから、標準的なチューニング (E-A-D-G-B-E) のCのキーで演奏している。
- ホノルル港
("Honolulu Harbor" ボーカル)
マリー・プラア・ロビンズによって書かれた1920年代のこのロマンチックな歌は、当時最高にモダンでエレガントだった船によるホノルルとヘ アイナ ナニ カレポーニ（美しい土地というカリフォルニア）の間の旅行を歌っている。ホノルル港は星のようにきらめく灯台と呼ばれている。
有名なロイヤルハワイアンバンドは、アロハタワーの近くで船が到着したときや出発するときにこの歌を演奏したものだった。それは到着した旅行者への歓迎と出港する旅行者への別れの挨拶の中心だった。ホノルル港は最近あまり録音されないが、1980年代にはマカハサンズ オブ ニイハウの四重唱があり、それに先行するものとしては、1970年代にスラックキーギタリスト、サニー・チリングワースの素晴らしい録音がある。レイはGメジャーチューニングをFに緩めて演奏している。
- ポーポキ スラックキー
("Popoki Slack Key" インストゥルメンタル)
アルバムは、再びAマウナロアチューニングをBbに上げて、心に残る美しいインストゥルメンタルで終わる。この歌（タイトルは「猫」の意味）は、一日の終わりを示唆し、美しいハワイの夕日を連想させる。
ライナーノーツは、ジェイ・W・ジャンカー。ジョージ・ウィンストンが技法について助言してくれた。
このアルバムで使われたレイ カーネのチューニング
Gメジャー「タロパッチ」
（最も低い音の弦から高い音の弦へ、D-G-D-G-B-D）ケイキ スラックキー、イ カ ポ メ ケ アオ、ヒロ E、ナ ホア ヘエ ナル、アロハ カ マニーニ、ワイ オ ケ アニアニ、ウルパラクア、レイ ナニ、ホノルル港
Gワヒネ（D-G-D-F#-B-D）ヴァアヒラ
Cワヒネ（C-G-D-G-B-E） ヒイラヴェ
Aマウナロア（E-A-E-E-F#-C#）キラキラ オ ハレアカラ、ポーポキ スラックキー
標準チューニング（E-A-D-G-B-E）ケ カリ ネイ アウ（ハワイアンウェディングソング）
マハロ
才能を与えてこの長い年月の間それをシェアさせてくれた善良なる主に、妻イローディアと子供たちに、アルバート・カヴェーロとヘンリー・カプアナに、ハワイ州文化芸術協会に、リン・マーチンに、全米芸術基金に、ジェイ・Ｗ・ジャンカーとヘラ・キムに、スミソニアン協会に、ワイアナエ・コースト文化芸術ソサエティーに、アグネス・コープ夫人に、ノエラニ・マホエに、トレーズウィンズ・レコードに、カイザー・モアナルア & カイザー・マイリ病院のドクターとスタッフに、ゲイ・テイラーに、ハワイ銀行に、ミルトン・ラウとカホク・プロダクションに、キース・ホーグンに、ハリーミュージックのアラン吉岡に、働き者のすべてのダンシング・キャットに、ウィンダム・ヒルに、ＢＭＧとナヴァーレに、ホノルル市に、ホノルル市議会に、ギャビー・パヒヌイと過去のすべての偉大なスラックキーマスターに、私のすべての学生に、すべての友に、すべてのファンに、...
ありがとう。感謝したいすべての人のリストをつくれないけれども、私はみんなを愛してるんだ。それは憶えていておくれ。
クレジット
制作 ジョージ・ウィンストン
技術 ハワード・ジョンストン ベン・チャーチル
技術補 マーク・スレーゲル モーリス・リックス
録音 カリフォルニア州ロサンゼルスのバーニー・グランドマン・マスタリングにてバーニー・グランドマン
グラフィックデザイン ハワイ州ヒロのネルソン・マクア・デザイン
カバーイメージ構成 ネルソン・マクア
レイ・カーネの背景カバー写真提供 レイとイローディア・カーネ
レイ・カーネの前景カバー写真 ウエモト・シュウゾウ
ナナクリのハワイアンヒーローの記事提供 ホノルルマガジン
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アローハ レイ・カーネ
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